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低用量経口避妊薬の承認までの長い道のり

2019年08月03日
薬と葉

経口避妊薬は女性ホルモンを一定成分配合した飲むタイプの医薬品で、ホルモン量に応じて高用量、中用量、低用量に分かれています。
高容量の経口避妊薬は、主に月経困難症などを緩和するホルモン療法のための医薬品として、かなり以前から存在していましたが、重大な副作用をもたらすおそれもあったことなどから、よりホルモン量を減量したタイプの製品の開発が急がれていました。
そこで登場したのが低用量の経口避妊薬であり、こちらは副作用の懸念も高用量のものに比べて少ないことから、月経困難症の治療目的で使用されることもあるものの、主には確実性の高い避妊目的で使用されるようになり、女性の自己決定の象徴ともなっています。

低用量経口避妊薬は、アメリカではすでに1973年に医薬品としての認可を受けており、それ以来、世界中の多くの女性により利用されてきましたが、日本では医薬品として厚生労働省からの承認を受けるまでに長い道のりを必要としました。
日本では1987年に5,000人規模の女性たちを対象とした大々的な臨床試験が行われ、続いて1990年から複数の製薬会社が医薬品としての承認申請を行っています。

しかしながら、このころ性感染症としてのエイズ(HIV感染症)が流行するきざしを見せはじめ、厚生労働大臣の諮問機関である中央薬事審議会での医薬品承認に向けた審査が中断するなどのトラブルがありました。
また、この低用量経口避妊薬の承認によって、性的なモラルが低下し、エイズの蔓延を助長するのではないかという懸念も根強く、別の公衆衛生審議会にも意見具申が求められています。
現在これらの審議会は改編されていますが、かくして医薬品としての承認が決まったのは1999年のことであり、申請から実に9年の歳月を要したことになります。

薬によって承認までの時間差が生じる

世界的に高い効果が確認され流通しているような医薬品であっても、日本ではまったく流通しておらず、個人輸入などの特別な手段をとらなければ使用することができないケースは意外とあるものです。
こうした事態が発生するのは、そもそも医薬品メーカーが厚生労働省に医薬品の承認申請をしていない場合もありますが、多くの場合、メーカーでの臨床試験や厚生労働省による審査などに時間がかかるのが原因とみられます。
医薬産業政策研究所の調査によれば、こうした日本と諸外国との差は平均して4年程度はあるといわれており、さまざまな病気に苦しむ人たちにとっての大きな足かせとなっています。
メーカーからの申請のためには、効果や効能の特定と、その有効性や安全性を証明するための臨床試験などの結果が求められますが、特に複数の疾患に効果があることをうたう場合については、それぞれの疾患ごとに有効性などのデータが必要となりますので、おのずと準備のために多くの時間を割かなければなりません。

また、厚生労働省の審査については、優先審査と通常審査という2つのパターンがあり、いわゆる難病や、生命に重大な影響がある疾患、病気の進行が不可逆的で日常生活に支障が生じるような疾患の治療薬については、他の申請に優先して審査を行うこととしています。
このため、通常審査扱いになったものを優先審査のものと比較すると、承認までの期間に平均して1年程度の遅れが出ることになります。

例えば、経口避妊薬の効能は避妊であり、致死的な疾患治療が目的ではないので通常審査扱いとなり、その分だけ承認が遅れます。
特に、低用量の経口避妊薬が最初に承認されたときの審査には9年かかりましたが、これには低用量の経口避妊薬の普及によってエイズなどの性感染症が蔓延するという懸念が示され、厚生労働省内の審議会がストップするなどの特殊事情があったことも原因となっています。